2006年06月13日

コシミハルのミュージックホール (可児市文化創造センター 大石時雄氏)

2000年2月、世田谷パブリックシアターという新しい劇場で、コシミハルのミュージックホール“ペリカン通り殺人事件”が上演され、その舞台を当劇場の制作スタッフとして観た私は、コシミハルが創り出す世界に魅了されてしまった。それ以来、ミュージックホール・シリーズは、世田谷パブリックシアターの自主事業・音楽企画の柱として現在も年1作品の上演が続いている。

 一般的なコンサートは、オープニングから2〜3曲が演奏された後1回目のMCが入るように構成されている。少なくとも私はそう思っていた。しかし、ミュージックホールはそんなこともなく、ちょっと長めの曲も短い曲もコシミハルの歌とダンス、ファゴットとピアノの生演奏、時折バレリーナとダンサーが舞台に花を添えるように現れて、淡々と、一つ一つの作品を大事そうに置いていくかのごとく進んでいく。ひとつの曲が終わって拍手をしていいのか悪いのか観ている私には判らない。

 舞台から何一つ強制されることなく時間と楽曲が過ぎていくのだが、どう受け止めていいのか判らないうちにいつの間にかコシミハルの世界に惹きこまれて、居心地良く客席に座っている自分に気がつくのである。

 アッという間に終わった。最後の曲であろうと思われたときには、恥ずかしい話しだが胸のあたりに熱い感じがしていた。素直に心を動かされていた。コシミハルのただのファンになっていた。劇場の、若くは無い制作スタッフとしては、後で少しばかり悔しい思いもあったが、なぜかこのミュージックホールにだけは、掛け値なしに好きになってもいいと自分に言い聞かせ、今もお付き合いさせていただいている。

 ここ数年の音楽シーンでは、どんな歌詞が歌われているのか聞き取れないのが流行っていたり、振り付けも歌もスピード溢れるものばかりで、40歳を越えてしまった者には、もういいかなって手をつけがたい感じがしていた。ひと昔の詩のリメイクも流行っているみたいだが、多くは自分たちの想い出が商品化しているようで嬉しくない。確実に齢を重ねているのだと思うが、生きている間はやはり音楽を楽しみたいと思うし、出来ればCDやMDからだけでなく時にはライヴにも出かけたい。そう、私のように大人になってしまった者が、居心地良く、素直に楽しめる、そんな音楽とダンスを繰り広げてくれる舞台芸術作品が、コシミハルのミュージックホールだと、自信を持ってお薦めする。
(2003年2月・可児市にて)
posted by admin at 20:00| musique hall